形は通常、人の感覚で判断します。つまり、凹みを表現するのであれば「浅い-深い」「狭い-広い」となります。形態の客観的な表現方法としては、ヒトの感覚を数値に置き換える方法を用います。例えば、「最大を10、最小をゼロ」とする場合、何段階目に当たるか、というものです。しかし、その方法でさえも主観的な感覚を元にした判断であるといえます。
そこで、本研究はヒトの上顎中切歯に見られるシャベル型の発現の程度を、3次元モデルを使ってコンピュータ自身が客観的に評価できるかどうかを検証しました。
方法は、マイクロCTスキャンデータを用いて、全ての歯において同一幾何構造(同一ポリゴン数、同一ランドマーク)を有する相同モデルを作成し、多次元尺度法と主成分分析法による解析を行います。その結果、シャベル型の程度を大小を客観的に評価しその形を特徴づける因子の判定が可能であることが分かりました。
※本研究は、産業技術総合研究所デジタルヒューマン工学研究センターとの共同研究です。
Kato et al. (2011) A Geometric morphometric analysis of the Crown Form of the maxillary Central Incisor in Humans. Dental Anthropology 24(1), 1-10.
http://anthropology.osu.edu/DAA/index.htm
近年、画像診断技術の進歩により、産業用X線マイクロCTが歯科医学研究にも広く活用されています。歯科医療用のコーンビームCTとは異なり、X線の焦点サイズが5ミクロンと小さいため、極めて小さな試料を高解像度で3次元撮影できることが特徴です。
愛知学院大学歯学部が所有する産業用マイクロCT(SMX-225CT,島津製作所)を用いて歯や骨組織などの撮像を行い、画像再構築ソフトで画像の抽出(セグメンテーション)を行い色を付けます。
作成された3次元モデルは歯の形態解析(研究)や形態の理解(教育)に応用されています。
加藤彰子、大野紀和、谷尻豊寿(2007)マイクロフォーカスX線CTを用いた歯の三次元形状モデルの作成 〜Vol-Rugleを用いた画像解析とデータの汎用化〜.画像ラボ18(7), 23-27
Kato A., Ohno N. (2009) Construction of three-dimensional tooth model by micro-computed tomography and application for data sharing. Clinical Oral Investigations 13(1), 43-46
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